ロワール渓谷地方
歴史
古代ローマ時代に始まり、ロワール川流域にブドウ栽培が広まりました。中世には修道院や王侯貴族の庇護のもとで品質が高められ、特にフランス王家の居城が点在したことから宮廷文化と結びついて発展します。ロワール川は内陸と大西洋を結ぶ交通路として機能し、ワインは各地へ運ばれました。16〜17世紀にはアンジューやトゥーレーヌのワインが英国や北欧へ輸出され、国際的な評価を得ます。19世紀のフィロキセラ禍で一時衰退しますが、再建とともに多様な品種とスタイルが確立され、現在のロワールの基礎が築かれました。
気候、地理
フランス最長のロワール川に沿って内陸から大西洋岸まで広がる産地で、東西に長い地理が気候とワインの多様性を生み出しています。西部のナント周辺は海洋性気候の影響が強く、温暖で湿潤な環境のもと、爽快な酸を持つミュスカデが生まれます。中流域のアンジューやトゥーレーヌでは海洋性と大陸性の中間的気候となり、シストや石灰質土壌がシュナン・ブランやカベルネ・フランに複雑さを与えます。上流のサントル・ニヴェルネでは大陸性気候が強まり、冷涼な環境と石灰質土壌がソーヴィニヨン・ブランに張りのある酸とミネラル感をもたらします。川沿いの緩やかな斜面と多様な土壌、気候の移ろいが、ロワールの幅広いスタイルを支えています。
現在
多様なスタイルと高い品質を武器に、国際的評価を着実に高めている産地です。シュナン・ブランやソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・フランを中心に、白・赤・ロゼ・スパークリング・甘口まで幅広いワインが造られ、特に白ワインとスパークリングは輸出市場で存在感を示しています。近年は「Loire Wines」という統一ブランドのもと、地域全体での発信力強化も進められています。また、有機栽培や環境認証の導入率が非常に高く、持続可能なワイン造りはロワールの大きな特徴となっています。気候変動への対応や軽快で飲みやすいスタイルへの需要にも柔軟に応え、伝統と現代性を両立した産地として進化を続けています。