日本ワインの原点ともいえる重要な歩みを持っています。甲府盆地では古くからブドウ栽培が行われ、鎌倉時代にはすでに甲州種の原型とされるブドウが育てられていました。明治時代に入ると西洋文化の流入とともに本格的なワイン醸造が始まり、1877年、県内出身の若者である高野正誠と土屋龍憲が政府の支援を受けてフランスへ渡り、最新の醸造技術を学びました。彼らの帰国後、勝沼を中心に近代的なワイナリーが設立され、日本のワイン産業が本格的に始動します。
その後、山梨の気候風土に適した甲州種を用いた醸造が定着し、地元消費を支える日常酒として発展しました。戦後には甘口ワインが主流となる時代を経ますが、1990年代以降は品質重視へと大きく転換します。現在では甲州ワインが国際的にも高く評価され、山梨県は日本最大かつ最も歴史あるワイン産地として確固たる地位を築いています。
気候、地理
甲府盆地を中心とする独特の自然条件に支えられています。周囲を南アルプス、八ヶ岳、秩父山地などの高山に囲まれた盆地地形は、雨雲を遮り日本有数の少雨地帯を形成し、ブドウ栽培に理想的な環境を生み出しています。年間日照時間は全国でもトップクラスで、果実は十分な成熟を得ることができます。
盆地特有の気候により昼夜の寒暖差が大きく、ブドウは糖度を高めつつ酸を保ち、香り豊かな果実に育ちます。夏は高温になるものの、扇状地や傾斜地では水はけが良く、過剰な湿気を避けることが可能です。土壌は花崗岩由来の砂礫質が多く、根が深く張りやすい点も特徴です。
また、降雨の多い日本の気候に対応するため、棚仕立てという独自の栽培方法が発達しました。これらの気候・地理条件と人の工夫が融合し、繊細で透明感のある山梨ワインの個性を形作っています。
現在
山梨県のワイン産業は、日本ワインを牽引する中核的存在として発展を続けています。県内には多数のワイナリーが集積し、勝沼や甲府盆地を中心に小規模ながら高品質志向の造り手が増加しています。甲州やマスカット・ベーリーAといった在来品種は、辛口で繊細なスタイルへと進化し、和食との高い親和性が国内外で評価されています。
近年は区画ごとの個性を重視した単一畑ワインや、自然酵母・低亜硫酸による醸造など、テロワール表現を追求する動きが活発です。栽培面では減農薬や有機栽培への取り組みも広がり、環境配慮型の生産が進んでいます。
また、ワインツーリズムの拠点としての整備も進み、ワイナリー巡りや地域食材とのペアリング提案が観光資源として注目されています。国際コンクールでの受賞や海外輸出の拡大により、山梨ワインは日本を代表する産地として、世界市場での存在感を着実に高めています。